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vol.001

平成30年厚生労働省令第100号として、平成30年7月31日に公布されました職業能力開発促進法施行規則の一部改正、「職業能力開発推進者の選任方法の見直し」をご存知でしょうか?

 

(改正内容)は、職業能力開発推進者の選任方法についてで、職業能力開発促進法施行規則の一部改正というものです。

具体的には、【職業能力開発推進者を「キャリアコンサルタント等の職業能力開発推進者の業務を担当するための必要な能力を有する者」から選任するものとする。】となり、今回同時に案内をされております「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等」と連動している改正であると思います。

(施行期日)は平成31年4月1日で、来春には各社即施行せよということで、強い意図を感じます。

 

ご存知の通り、従業員のキャリア形成を支援し、個々の職業能力を存分に発揮してもらうことは企業の発展に不可欠な要素です。従業者の職業能力開発を計画的に企画・実行することが大切ですが、こうした取組みを社内で積極的に推進するキーパーソンが「職業能力開発推進者」です。またその役割は、

  (1)事業内における職業能力開発計画の作成と実施

  (2)企業内での従業員に対する職業能力の開発に関する相談と指導

  (3)国、都道府県、中央職業能力開発協会(各都道府県協会)との連絡等

人事・教育訓練等で担当部署の部・課長などを職業能力開発推進者として選任することが「職業能力開発促進法」第12条において、事業主の努力義務となっています。

 

特に、今後はセルフ・キャリアドックの活動の中で、企業ではキャリアコンサルタント資格を有する「職業能力開発推進者」が、人材育成でも中心的な役割と責任を担うことが求められるのではないでしょうか?

 

 

vol.002

最近、新聞紙上では「人手不足」という言葉が大変よく目につくようになりました。戦後日本の総人口は増加推移を辿ってきましたが2008年にピークを迎え、それ以降は減少推移となっています。そして2042年のシニア世代人口のピークに向かって、今から24年先を見据えた対策が急がれている訳です。

 

目の前の「人手不足」は大変大きな問題ですが、一方で人手が増えることはないことが明確な環境です。企業、経営者、そして人事部門は何をすべきなのでしょうか?そして人材開発という側面から、社員のキャリア支援の仕組みが、どのようにお役に立てるのでしょうか?

 

ご存知の通り、国の「未来投資戦略2018」が本年6月より始動し、先月開催の「第20回未来投資会議」においては、高齢者雇用促進や中途採用拡大・新卒一括採用見直しなどが議事となっています。 

参考:首相官邸HP http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/

 

この戦略の中で、厚生労働省は「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置しました。当組織は、団塊ジュニア世代がシニアとなる2040年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現を目指しており、「多様な就労・社会参加」が大きな課題のひとつとなっております。

 

具体的には、「働き方改革」を通じて取り組んできた「一人ひとりの意思や能力、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会」の実現に向けた環境整備をさらに推進するとあります。つまり企業にとっては今後益々、社員個人個人の多様性への配慮や能力開発の機会提供などの実施を通じて、社員のキャリア自律と働きがいを高めることが求められるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000101520_00001.html

 

一方で、このような国の政策が急激に進む中、我々企業分野のキャリアコンサルタントは今後どうあるべきでしょうか?その答えの一つが平成30年厚生労働省令第100号として、平成30年7月31日に公布されました職業能力開発促進法施行規則の一部改正「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し」です。

 

こちらに関しては、次号の第3回メールニュースでお伝えするようにいたします。それにしても「人手不足」は喫緊の大問題ですので、「採用」から「育成」に力点を大きく見直す必要性もあります。その点も次回に。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000352323.pdf

vol.003

今回は、前号で最後に触れました「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し」についてお伝えします。既にご存知の通り平成30年厚生労働省令第100号として、平成30年7月31日に公布されました職業能力開発促進法施行規則の一部改正となり、平成32年4月1日が施行期日となります。

 

我々企業分野のキャリアコンサルタントは今後どうあるべきでしょうか?その答えの一つを今回の能力要件の見直しが示していると言えます。つまり、キャリアコンサルタントが担うべき「役割」が当初の設計から更に拡大されるわけであり、結果として養成講習と更新講習の内容が拡充強化され、全体時間数(140時間→150時間)が見直されます。

 

その背景は労働政策上の課題であり、「一億総活躍プラン(平成28年6月)」「働き方改革実現計画(平成29年3月)」「人生100年時代構想の議論(平成29年9月)」が挙げられます。働く方一人ひとりのキャリア自律意識と、企業によるキャリア支援が大変重要な時代です。

 

具体的な講習内容の拡充強化は、

○セルフ・キャリアドック等の企業におけるキャリア支援の実施に関する知識・技能

○リカレント教育等による個人の生涯にわたる主体的な学び直しの促進に関する知識・技能

○職業生涯の長期化、仕事と治療、子育て・介護と仕事の両立等の課題に対する支援に関する知識・技能

○クライアントや相談場面の多様化への対応に関する知識・技能

となりますが、企業分野のキャリアコンサルタントは、多くの知識と技能を獲得する必要があります。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000352323.pdf

 

特に、セルフ・キャリアドックに関しては、最新の情報を常にキャッチアップしていく必要があります。既にご存知かと思いますが、厚生労働省は平成30年度事業として「セルフ・キャリアドック普及拡大加速化事業」を展開しております。これは平成28-29年度に実施した「セルフ・キャリアドック導入支援事業」にて蓄積された事例紹介や導入サポートを行っておりますので、有意義に活用できるのではと思います。

参考:セルフ・キャリアドック導入支援サイト http://selfcareerdock.mhlw.go.jp/

 

一方で、若者の適切な職業選択の支援として「若者雇用促進法」があります。この「職場情報の提供について(法第13条・第14条)」(イ)職業能力の開発・向上に関する状況では、「キャリアコンサルティング制度の有無及び内容 ※セルフ・キャリアドック(定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組み)がある場合はその情報を含む。」とあります。つまり制度導入と情報開示により、既に若者の企業選択条件の一つになっているのです。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html

 

前回も触れました「人手不足」は喫緊の課題ですので、企業にとっては「採用」と「育成」の両面から見て、セルフ・キャリアドックの制度化は今後益々重要な施策となるのではないでしょうか。

vol.004

今回は、新年号として日本経済新聞1月3日付の朝刊に掲載された衝撃的な記事について触れたいと思います。

「2050年に最多になる日本人の死因、自らの生の長さを決める『自殺』がトップに。」

 

元旦から日経の特集記事として「新幸福論Tech2050」というタイトルで連載が始まり、その第2回目、ご覧になられた方も多いかと思います。自殺が死因のトップになるという若手研究者300名の意見。その理由は、「人間の寿命が150歳まで延びること」です。

質問1. 2050年に、あなたは何歳ですか? (因みに私は85歳です。)

質問2. そこから150歳まで、あと何年間生きますか? (私はまだ65年間生きます。)

質問3. どのようなキャリアを歩みたいですか? (・・・)

 

どうしてそんなに長生きできるのか?記事では3つのポイントを掲載しています。まず一つ目が「若返りの薬」として研究されている「NMN」という生体物質で、臓器の老化を防ぐのだそうです。日本企業が大量生産に成功しているようで、以前HNKスペシャル「NEXT WORLD」でも取り上げられました。

 

次に二つ目はiPS細胞を使ってブタの体内で人の膵臓を作製し、いずれは生きた臓器同士の交換も可能になることを目指す研究。そして三つ目は脳波で操るロボットアーム。「動け」と念じると、脳から検知した電気信号を帽子のセンサーで捉え、「3本目の腕」が動くという仕組みです。

 

また加えて、先ほど触れた「NEXT WORLD」で注目なのが「ナノマシン」。血液中をナノマシンが常に巡回していて、がん細胞などの病気を検出したら治療を施してくれるというナノテクノロジー。同時に正確な体内データを常にチェックすることも可能となります。

 

人間が衰えを知らない肉体を持つ2050年。老いの抑制、臓器の交換、脳と機械の融合が進めば、人間は不老不死に近づくのでしょうか? その結果、自ら生の長さを決める「自殺」を選択せざるを得ない、「もうこれ以上生きたくない・・・」となってしまうのでしょうか。

 

ライフキャリアの大変革を伴う未来を考えると、「一体何のために?」という素朴な疑問を感じるのが今の正直な気持ちです。 しかしながら一方で、変化は常に進みます。つまり「その変化を、一人ひとりがどう受け止めるか?」が大変重要な時代であり、更に変化がスピードアップして進んでいくのだと感じさせられる記事でした。

 

30年後の2050年、決して「自殺」がトップではなく、100歳でも120歳でも、一人ひとりが働きがい・生きがいと共に、「笑顔で幸せに活躍できる国」を目指して、今後のセルフ・キャリアドック活動に注力したいと思う年始となりました。みなさんはいかがですか?

 

vol.005

1月10日に厚生労働省より「キャリアコンサルタントの継続的な学びの促進に関する報告書」が公表されましたので、その内容に関して記載したいと思います。プロフェッショナルへの道です。

参考:厚生労働省HP  https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199219_00001.html

 

報告書では、平成28年4月に創設されたキャリアコンサルタント登録制度を踏まえ、キャリアコンサルタントが多様な領域で活躍するための方策と、資格取得後に継続的に学んでいくべき事項を体系的に整理し、キャリアコンサルタント及びこれを組織する団体などの両面から、主体的・継続的に学ぶための指針を示しています。

 

背景は、「キャリアコンサルタント国家資格試験で求めている能力水準が、現実的視点も考慮したいわばミニマム標準として設定されたもの」であるために、実際に現場で十分に活躍できる力量を身に付けていく資質向上の必要性です。具体的には、「キャリアコンサルタントが実務経験を積む機会を確保するための方策」や、「資格取得後の継続的な学習に特に必要な項目、標準的学習モデル」などを提言していますが、いくつかポイントを見て参りましょう。

 

まずは、以前-003-にてお伝えしました「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し」との連動では、キャリアコンサルタントを組織する団体に対して、セルフ・キャリアドック知識・技能や職業能力開発推進者の選任に関する規定などの周知を求めています。

 

また、「実務経験機会の確保」として、キャリアコンサルタントの初期キャリア形成支援策「インターンシップ方式による仕組み作り」を提言。つまり養成講座を実施する団体等に対して資格取得後に実務経験機会を求めており、それは団体等の育成責任が今後はより重くなるのでしょうか。

 

一方で、キャリアコンサルタントに対しては「継続的学びの推進」による資質の向上を求めており、あるべき姿や学習項目が示されていますが、注目ポイントは【キャリアコンサルタントに求められる学習のマトリックス】(別添2 P6参照)です。求められる学習には「深化」と「アップデート」があり、学ぶべき対象は共通領域と専門領域に分類でき、さらに専門領域には必修と選択が存在しているので、これを構造的に整理したマトリックスが示されます。

 

今後、「活動(専門)領域」に応じた高い知識・スキルを身に付ける時代、つまりキャリアコンサルタントには自己の成長に必要な学習事項を適切に選び取る力が求められます。そのためにも「スーパービジョン」が更に重要となるでしょう。

 

「自己研鑽」という言葉で一括りにされていた学習に対して、個人と組織団体の両面からプロフェッショナルの姿とその道筋がより具体的に示されました。自ら更なる資質向上による成長を楽しみたいと思いますが、皆さまはいかがでしょうか?

 

vol.006

先日、キャリア支援のお手伝いをさせていただいている企業の社長様とお会いした際に、新卒および中途採用社員の離職率が最近やや高いことを大変気にされておりました。それは今後「人手不足」が急速に進んでいく中で、大きな経営リスクとなる可能性を心配されてのお話でした。

 

ご存知の通り、1月中旬に厚生労働省より「平成30年度第8回雇用政策研究会」の報告がリリースされ、新聞各紙も「2040年の就業者数が20%も減少する」という衝撃的な数値を報道しております。働く方々の数が確実に減少する日本の将来に向けて、早急に対策を開始する必要があります。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuan_128950.html

参考:共同通信社HP https://this.kiji.is/457712871035618401

 

先ほどの社長様とのお話で、「従業員数が20%減る時代へのリスクマネジメント策は?」と伺ったところ、

①まずは「経験者の人数を維持」するために、若手社員の離職率改善やシニア社員の再雇用期間延長、女性社員の育休後の復帰率向上など、少しでも多く長く引き留めたい。

②また「生産性を向上」させないと仕事が回らないので、仕事の見直しと社員の能力開発。

③そしてAI等のIT活用強化や外国人労働者雇用も検討を始めるとおっしゃっていました。

 

お話の最後、社長様の一言が強く残りました。「負け組になるわけにはいかない」。つまり人手不足により長時間労働が増加し、労働環境の悪化による従業員のストレスリスクが急増、結果、離職率が大幅に上昇し採用も苦しくなる企業の姿もイメージできるのでしょう。

 

一方で、1月31日リクルートキャリア社がリリースしました「就活生、入社予定企業の決め手は?」というリサーチ結果では、「自らの成長が期待できる」という理由が半数近い47.1%で第1位。学生の意識が「就社から就職」への変化の兆しであると分析されています。

参考:リクルートキャリアHP https://www.recruitcareer.co.jp/news/20190131.pdf

 

これは大学におけるキャリア教育や就活時のキャリア支援など、多くのキャリアコンサルタントの方々の努力による就職への意識の変化であり、同時に人生100年時代の「働くことへの意識の変化」でもあります。企業には従業員のキャリア自律支援がマストの時代でしょう。

 

例えば、以前もお伝えした通り、「若者雇用促進法」の「職場情報の提供について」の中に、「キャリアコンサルティング制度の有無及び内容 ※セルフ・キャリアドック(定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組み)がある場合はその情報を含む。」とあります。つまりセルフ・キャリアドックが既に若者の企業選択条件の一つになっています。

参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000097679.html

 

「負け組」を1社も作らないためにも、キャリアコンサルタントである私たちの支援活動が大変重要であり、幸せな社会・文化を創っていく役割と責任を実感する機会でした。

vol.007

いよいよ4月より「働き方改革」の第1幕が始まります。多くの方々が年度末から新年度へと、大変多忙な日々を送られていらっしゃるのではないかと思います。日々のお仕事に加え花粉と通勤電車のラッシュで更にストレスが増加する方も多い時期ではとお察しします。

 

そのような中で、ご存知のようにツイッターで大きな反響を呼んだ書き込み。

「満員電車にベビーカーで乗るな!」  「抱っこひもだったら子ども死んでるわ!」

みなさんはどのように受け止めましたか?

 

一昔前の「男性正社員」が中心の働き方から、今では「仕事と育児の両立」の時代。働くお母さんや育児をするお父さんが、新しい家族のスタイルとして徐々に定着をし始めています。多様な働き方が推奨される時代が急速に進んでいます。

 

一方で今回のような出来事は、どこか時代について行けない価値観をお持ちの方が、まだまだ多くいらっしゃるのだと改めて考えさせられました。お子さんを電車で保育所に預ける道中での避けられないラッシュ電車、どうして未来を担う大切な子どもを一番に考えられないのでしょうか。大変残念です。

 

時を同じくして、国連による世界の国や地域の「幸福度ランキング」が発表され、報道各社が一斉に取り上げましたので記憶に新しいのではと思います。今回、日本は58位(全156か国・地域)ということで、残念ながら昨年の54位から更に順位を下げるという結果。G7で最下位、台湾や韓国も下回りました。

 

幸福度ランキングの測定項目ごとの順位を見てみると、以下の通りとなります。

(1)人口あたりGDP(対数):一人当たりのGDP 24位

(2)社会的支援(ソーシャルサポート, 困ったときに頼ることができる親戚や友人がいるか):社会的支援 50位

(3)健康寿命:健康に生きられる年数 2位

(4)人生の選択の自由度(人生で何をするかの選択の自由に満足しているか):社会の自由度 64位

(5)寛容さ(過去1か月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか):他者への寛大さ 92位

(6)腐敗の認識(不満・悲しみ・怒りの少なさ、社会・政府に腐敗が蔓延していないか):政府やビジネスの腐敗のなさ 39位

参考:World Happiness Report 2019 http://worldhappiness.report/ed/2019/

参考:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/世界幸福度報告

 

わたくしがキャリアコンサルタントとして、今回大変気になったのは、「(5)寛容さ(過去1か月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか):他者への寛大さ」が大変低いということです。勿論「寄付の有無」という質問への違和感は拭えませんが、通勤ラッシュでの出来事を振り返ると、利己主義的な余裕のなさ、スピードについて行くことで精一杯で、幸せを感じる暇もない方が増えているように感じます。

 

SDG‘sで「持続性」を重視しようとする動きも活発になりつつある現代、一度立ち止まって自分を振り返り、「幸せって?」と問い直す支援も大事なのではないでしょうか。心を見つめ直す支援が、働き方改革の第2章であると思いませんか?

vol.008

平成が幕を閉じ、いよいよ5月より令和の時代が始まりました。歴史的な10連休という国を挙げてのイベントで幕を開け、今回は元号の変化をポジティブに捉える方が大変多く、新たな時代に期待が持てる前向きな気持ちになれます。

 

そのような中、訃報が伝えられました。クランボルツ先生が令和初日の5月1日に享年90歳で他界されました。心よりご冥福をお祈りいたします。(NCDA :National CareerDevelopment Association)

https://www.ncda.org/aws/NCDA/pt/sd/news_article/230713/_PARENT/layout_details/false

 

さて令和は、皆さまはどのような時代になると感じていますか?大きなチャレンジとして、人口減少に伴う労働力人口の低下により、「人手不足の加速」と「社会保障制度の破綻」のリスクが増加することは統計的に明白で、平成からの宿題です。

 

そこで、平成最後となった4月(と追加)のメガバンクからのプレスリリースに注目してみたいと思います。

まずは、「三井住友銀、最短30歳で管理職に 定年65歳に延長:日本経済新聞 4/16」です。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43759810V10C19A4MM0000/

 

記事によると、2020年1月からの新人事制度では人事の階層を3つに半減。能力が高いと評価されると8年目から課長などの管理職に上がれるようになるようで、新卒・若手社員の優秀な人材の確保を狙いたいのでしょう。

 

また、65歳定年制度に変更。55歳以降の給与も6割程度から60歳まで同水準へ見直しを行い、評価制度で処遇に差を設ける一方、専門性を生かし活躍する場も提供するようで、シニア社員のつなぎ留めと戦力化を狙います。

 

もうひとつは、「三菱UFJ、全男性行員に育休1カ月:日本経済新聞 4/18」です。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO43839860X10C19A4EE9000/

 

記事では、実質的に長期の育休取得を義務付ける方針で、5月から2歳未満の子供を持つ国内全ての男性行員に毎年1カ月の育児休業の取得を強く促す制度を導入。女性が働きやすい職場をアピールし人材の確保を狙います。

 

(追加記事)「70歳まで再雇用 大手行も りそな、65歳から延長 過去の採用抑制響く現役世代補う:日本経済新聞 5/9」

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190509&ng=DGKKZO44532180Y9A500C1EE9000

 

わたくしの個人的な意見ですが、過去の合併統合などによって非常に保守的な経営組織と感じるメガバンク。令和に向けて、このような人事制度の大きな変革を自ら打ち出す意味は、大変大きな危機感からではと強く感じます。

 

一方で、東京商工リサーチは同じ4月に、「2018年の「人手不足」関連倒産、過去最多の400件(前年度311件)4/5」 をリリース。大変残念な内容ですし、心配な数値ではないでしょうか。

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190405_01.html

 

令和の時代、「働き方改革」の実践や「人事制度」等の変更など【組織のハード面での変革】が着々と進んでいます。しかし一方で「働きがい」や「エンゲージメント」など【個人のソフト面への支援】、つまりキャリアコンサルティングを車の両輪として、企業に定着させる必要があると強く思います。なぜならば組織は人で成り立っているからです。

vol.009

プロフェッショナルなキャリアコンサルタントとして企業分野でセルフ・キャリアドックを展開する上で、「過去からの大きな流れと今後の活動のあり方」を学ぶ大変重要な機会がありましたので、今回から数回にわたってみなさまと共有してまいります。

 

それは、6月8日に行われました「2019産業カウンセリング 第48回全国研究大会(主催:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会)」の特別講演でお話をされました、花田光世 慶応義塾大学名誉教授の講演内容です。

 

土曜日の15:30~17:00カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)のホール1700席が満席となり、更に立ち見の方もいらっしゃるほどの大盛況の講演会。タイトルは「これからのキャリアアドバイサーの役割と活動」でした。

 

まずは最初に、これまでの大きな流れについてお話をされました。厚生労働省の「職業能力開発基本計画」の過去の策定ポイントの推移について、発表の都度「社会のニーズから見た重要性」が加えられており、その結果としてキャリアコンサルタントの役割が付加されてきていることを丁寧に説明されました。

 

例えば、平成13年に発表された「第7次職業能力開発基本計画」においては、キャリアコンサルティングとしての初期段階として、キャリア・カウンセリングのアプローチに重点が置かれている内容でした。

 

しかし、5年後の「第8次職業能力開発基本計画」においては、より職業キャリアに重きが置かれ、キャリア形成やキャリア構築に目標が設定される内容に進化し、役割や居場所、行き場所をキャリアステージごとに支援する施策となっています。

 

更に、平成23年の「第9次職業能力開発基本計画」では、ライフキャリアやセイフティーネットなどが注目され、少子高齢化、シニア層、非正規社員などの社会的な課題を背景に、その施策が策定されました。

 

そして現在の平成28年発表「第10次職業能力開発基本計画」では、生産性向上とそのための人材育成戦略、そして組織活性化を目指すためのセルフ・キャリアドックの努力義務化など、社会のニーズに対応していることが確認されました。

 

ここで花田先生からの問いは、

「キャリアコンサルタントとして新たな役割が求められていますが、あなたはどうしますか?」

「できないと、放棄しますか?」 「全く無視はできないと考えますか?」 「期待役割に応えようと考えますか?」 「どこに重きを置きますか?」

さてみなさまは、いかがでしょうか?

 

次号では、この続きとして「長いライフキャリア」に軸を置いた、これからの世の中と新たな役割についてのお話をお伝えして参りたいと思います。どうぞお楽しみに。

vol.010 

花田先生特別公演より(その2)

前回に続き、「2019産業カウンセリング第48回全国研究大会」の特別講演でお話をされました、花田光世 慶応義塾大学名誉教授の講演内容より、「過去からの大きな流れと今後の活動のあり方」についてお伝えします。

 

前回は「職業能力開発基本計画」の推移を学び、キャリアコンサルタントへの役割が付加されてきていることをお伝えし、今回は「長いライフキャリア」に軸を置いた、これからの世の中と新たな役割についてのお話を記載しましょう。

 

まずは、今後ますます進む健康寿命の延伸によって、一人ひとりが今までにはない長いライフキャリアの中で、その働くステージごとに「役割」や「居場所」、「行き場所」をどのように見つけていくのかが大きな課題となります。

 

それは社会保障制度においては、日本は少子高齢化による労働人口の減少によって、いわゆる「担ぎ手」である保険料負担者の割合が大きく減るために、制度自体の見直しが急務の状況にあることはみなさんご存知でしょう。

 

例えば2025年問題。6年後2025年に団塊世代が75歳以上になり、全人口の2割弱が75歳以上となる超高齢化社会が到来します。つまり、みこしの「乗り手」に対する「担ぎ手」不足が急速に深刻化するわけです。

 

そのために政府は、現行の高齢者雇用安定法から更に一歩踏み込み、「担ぎ手」を増やすために「65歳定年/70歳雇用延長」や、「乗り手」を増やさない「選択年金75歳から」などを2025年には導入もありえます。

 

つまり、健康でお元気な65歳~70歳(またはそれ以上)のシニア社員の方々に対して、企業は持続的な活動のために、心の問題を中心とした福祉的な雇用支援から、一歩の踏み出しによる戦力化への支援が重要となります。

 

同時に働く個人は、どのステージの方も「長いライフキャリアの中でのキャリア自律(居場所づくり)」が大変重要な時代で、だからこそ、今後の社会変化を充分理解した上で、個人と組織を支援できるキャリアコンサルティングが必要です。

 

ここで花田先生からの問いは、

「いままでのお話から、少しみなさんに考えていただきたいのですが。」

「2024年度末(2025年3月末)までにキャリアコンサルタントを10万人にする?」(日本再興戦略改訂2014(6月閣議決定)の養成計画)

「職業能力開発推進者はキャリアコンサルタント等より選任する?」(2019年4月1日施行の職業能力開発促進法改正)【-No.001-】に掲載

「すべては2025年問題につながっていると思いませんか?」 さてみなさまは、いかがでしょうか?

 

次号では続きとして、講演でお話されました花田先生の今後の予測です。どうぞお楽しみに。

vol.011

花田先生特別公演より(その3)

今回も、「2019産業カウンセリング第48回全国研究大会」の特別講演でお話をされました、花田光世 慶応義塾大学名誉教授の講演内容より、「過去からの大きな流れと今後の活動のあり方」についてお伝えします。前回「長いライフキャリア」のお話をお伝えしましたが、今回は「今後の予測」ついてお伝えします。

 

平成30年(2018年)~令和元年(2019年) 「働き方改革」の実施に伴い、例えばダイバーシティ、多様な社員の活躍における「両立支援」が挙げられます。障がいや治療という特性に対して合理的配慮を持ち、福祉的支援から更に戦力貢献への支援がキャリアコンサルタントには求められています。

 

令和2年(2020年)~ 前回お伝えしました「ライフキャリアの長期化」に伴う「シニアへの支援」や、マルチステージ化する働き方における「兼業・副業」が進むことへのキャリア支援が考えられます。

 

令和3年(2021年)~令和5年(2023年) 令和3年「第11次職業能力開発基本計画」が発表される年です。その中で企業分野におけるキャリア支援においては、より「経営の視点」がキャリアコンサルタントに求められる時代となり、セルフ・キャリアドックの導入が進むと考えます。

 

一方で、キャリアコンサルタントは求められる専門性から「分野別」認定が進むと考えられ、例えば企業分野が専門領域の1級技能士によるスーパービジョンなど、分野別指導体制へと移行していきます。

 

令和6年(2024年)~令和7年(2025年) 2025年3月末までに「キャリアコンサルタント10万人」日本再興戦略改訂2014養成計画のゴールであり、2025年問題である「超高齢化社会」へと突入して行くわけです。

 

令和8年(2026年)~ 「第12次職業能力開発基本計画」が発表される年です。「超高齢化社会」でのシニア支援やリカレント教育のアドバイス支援などが求められると考えます。特にリカレント教育に対しては今後国の財政的な支援も増加していくと思われます。

 

令和13年(2031年)~ 「第13次職業能力開発基本計画」 49%の仕事がAIに替わって無くなり(オズボーン博士)、今の子供の65%が新しい仕事に就く(キャシー博士)という時代になり、多くの方が不安を抱えることが考えらえます。

 

ここで花田先生からの問いは、

CLの「将来仕事がなくなる不安・・・」に対して「不安への寄り添い」は大切。ですが本当に大きく変化する時代に、傾聴と寄り添いだけが支援でしょうか?

今後、企業分野CCに求められる新たな役割は、「CLの新たな居場所・行き場所のアドバイスや役割作りの支援」になると考えますがいかがでしょうか?

 

次号では続きとして、講演でお話されました花田先生の「これからの活動内容」です。どうぞお楽しみに。

vol.012

花田先生特別公演より(その4/最終回)

今回も、「2019産業カウンセリング第48回全国研究大会」の特別講演でお話をされました、花田光世 慶応義塾大学名誉教授の講演「過去からの大きな流れと今後の活動のあり方」の中から、最終回は「これからの活動内容」ついてお伝えします。

 

個人の心の問題を中心に支援をするキャリアカウンセラー、個人のキャリア開発を主に支援をするキャリアアドバイザー、そして企業・組織の課題にも関わるキャリアコンサルタント。その支援レベルを花田先生は、1次から7次までに分けていらっしゃいます。

 

例えば、「メンタル不調を抱えながら現職への不安に対して寄り添う支援」を1次支援、「キャリア開発方法が分からない不安に対して情報提供による一歩の踏み出しの支援」を2次支援、「自分軸を出したい、でも組織の要請が許さない状況に対して、上司への介入による役割作り支援」の3次支援などです。

 

このようにキャリアコンサルタントの活動レベルが1次から7次支援まで存在すること、特に3次支援以降の活動レベルとそのヒントとなる「小さなサイン」を4点話されました。

 

小さなサイン⓵は、職業能力開発促進法「キャリアコンサルティングとは」の定義です。それは心の問題への支援のみならず、個人が自発的に職業能力の開発や向上に努めることへの「相談、助言、指導」であると法律で役割が明確化されました。

 

また事業主の責任として、「業務に必要な技能や知識の情報提供」などが求められており、つまりその支援もキャリアコンサルタントの役割ですし、更に「その他の援助」として、セルフ・キャリアドック制度や360度サーベイなども活動範囲となります。

 

小さなサイン②は先にも触れましたが、本年4月1日から施行された「職業能力開発推進責任者は、キャリアコンサルタント等より選定する」という法改正であり、キャリアコンサルタントの役割と責任の拡大、地位の向上であるともいえます。

 

小さなサイン③は、労働安全衛生法で義務化された「快適職場づくり」の観点から、職場環境づくりの「ソフト面」のチェック項目では、キャリア教育支援が事業主に求められています。ですから働きやすい職場づくりの観点からの役割も担うわけです。

 

小さなサイン④は厚生労働省の組織変更で、平成28年「人材開発統括官」が誕生しました。これは、旧来の教育訓練トレーニングで「育てる」考え方から、個々人の能力を開発する「育つ仕組み」作りへのパラダイム転換ともいえる変化です。

 

この「育つ仕組み」とは、個人の多様な能力に関して、棚卸しをして、新たな発見をし、組み換えをして、活用できるように支援をすることとなります。

 

最後に花田先生からのエールは、

「キャリアコンサルタントを選択したのは、私たちの宿命なのかもしれません。」「私自身は、『面談に始まり面談に終わる』という考えを持っています。」「心の支援から組織の支援まで、キャリアコンサルタントとして共に活動して参りましょう。」

 

次号からは、「全国研究大会:第3分科会SCDプロジェクト」についてです。どうぞお楽しみに。

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今回からは、「2019産業カウンセリング第48回全国研究大会」の第3分科会にて発表をいたしました、日本産業カウンセラー協会神奈川支部で実践しているセルフ・キャリアドック導入推進プロジェクト活動についてご紹介します。

 

今から2年前2017年秋にプロジェクト活動を立ち上げました。「セルフ・キャリアドックを協会の事業として立ち上げる」を目標に掲げ、「①人づくり」「②ツールづくり」「③顧客づくり」の順番に実践、大手通信会社への導入を行いました。

 

「①人づくり」

プロジェクトメンバーは、支部開催「セルフ・キャリアドック実践キャリアコンサルタント育成講座」を修了された50名の内20名ほどの方々がボランティアで参加。企業人事、ハローワーク、研修講師など、多方面からの混合チームでした。

 

20名のメンバーが、セルフ・キャリアドック推進に高い志と熱意をもって積極的に参画することで、セルフ・キャリアドック導入実践を一から体験・学習するインターンシップの場となりました。

 

「②ツールづくり」

テーマをⅠ新卒、Ⅱ育児/介護、Ⅲ中堅、Ⅳシニアの4つに設定、チーム分けを行って「企業提案用の協会専用リーフレット」を作成しました。特に「本人の想い」を示した独自の内容です。

 

そしてリーフレットを活用して、大手通信会社50代社員の方約40名へのトライアル導入が決定。「ワークショップ・コンテンツ」や「本人用セルフ・キャリアプロファイル」、「意識調査表」、「アンケート用紙」、「面談レポート」、「面談日程管理表」などを作成しました。

 

「③顧客づくり」

大手通信会社の実践フェーズ。まずキャリア・ワークショップでは、環境理解の講義と4つの自己理解ワークを2回開催。棚卸しワークが効果的でしたが一方課題も見えました。

 

次に面談。参加キャリアコンサルタント15名は事前に「構成的面談トレーニング」を何度も学習し、面談レポート作成や組織提言作成ポイントなども学び、いざ本番に臨みました。

 

そして「意識調査表」や「アンケート用紙」、「面談レポート」を集計。メンバーでディスカッションを繰り返しながら「最終報告書」を作成しました。このパートは大変苦労が多かったです。

 

現在プロジェクト活動は、上記活動を経験した1期生を中心に、6月の全国大会以降は新たに2期生が順次加わりながらトライアル2社目の準備中で、更に年内に3社目の実践を予定しています。

 

次号も「第3分科会プロジェクト」の「①人づくり」「②ツールづくり」「③顧客づくり」について、より詳細な内容をお伝えします。どうぞお楽しみに。

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